浅井健一&TIK、唸らせたツアー最終 揺るがぬ信念を感じさせる

音楽

 浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSが5月12日、東京・新木場STUDIO COASTでライブツアー『浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS Sugar Days Tour 2018』のツアー・ファイナルをおこなった。【取材=桂 伸也】

 1991年にバンドBLANKEY JET CITYでメジャーデビュー、バンド解散後は数々のプロジェクトや、自身のソロなどで精力的に活動を続け、さらに音楽にとどまらず執筆や絵画など多方面でその才能を発揮している浅井。2016年に元NUMBER GIRLの中尾憲太郎と、カナダやアメリカなどで活動してきた小林瞳とともに結成した、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS(浅井健一&TIK)は今年2月14日に、2ndアルバム『Sugar』をリリースし、3月からそのリリースツアーをおこなってきた。

 この日のステージは『Sugar』の楽曲、そして浅井健一&TIKの楽曲だけでなく、BLANKEY JET CITY時代の楽曲やその後結成したJUDEの楽曲も盛り込まれておこなわれており、往年のファンにはたまらない、そして新たなファンには浅井自身の信念は、決して揺るがないものであることを、まざまざと見せ付けられるステージとなった。

求める画を自由に描くようなプレー

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

 ステージスタートの直前には、どこからともなく「ベンジー!(浅井のニックネーム)」と叫ぶ声が。その声は周りに徐々に伝播し、一つの渦のような、大きな熱気のかたまりを形成していった。スタート予定時刻を10分ほど過ぎたころ、暗くなった会場の中で、ステージの後に大きな「Welcome!」という言葉がプロジェクターで映し出された。いよいよ彼らは、大きな歓声と拍手に迎えられステージに現れた。そしておもむろに中尾がベースのリフを弾き始めると、徐々に浅井がギターの音を絡みつけ始める。さらにそれに合わせ小林がリズムを刻むと、いよいよこの日のショーの幕は開かれた。

 オープニングナンバーは「Watching TV〜English Lesson〜」。爆走8ビートに乗せた、グルービーなベースのリフ。その上を、浅井のギターが縦横無尽に駆け巡る。そこには決して複雑なコード進行などはない。シンプルなベースラインが存在するだけだった。しかし浅井がその上に乗ると、さまざまな景色が見えてくる。この楽曲は、単純にコーラス毎に“Watching TV”という喋りが入るだけというもの。しかしそれを浅井が言ったり、中尾、または小林が言ったりすることで、その続いていく様相は一変する。

 いや、まるで浅井がその言葉に合わせて、さまざまな景色をギターで描いているかのようでもあった。彼のギターは、評論風にいえば「引き出しが多い」と片付けられてしまうかもしれない。しかし、実際に見えてくるその風景はそんな単純なものではない。まるで真っ白なキャンバスに、浅井自身の求める画を自由に描いているようでもあった。もっともその絵は美しいというたぐいのものではなく、暴力的なほどに激しく、そして生々しいものではあるが。

 『Sugar』の楽曲「Vinegar」「どっかいっちゃった」にシングルリリースされた「OLD PUNX VIDEO」とプレーは続いていく。このステージで聴かれたサウンドは、近年のロックに比べると、どちらかというと若干ローファイな印象があった。なんとなくこもり気味の、不確かなエッジ。だがそのエッジを不確かにする、被せられた何か邪魔なものを、まるで打ち破るがごとく打ち鳴らされ続けていたビートに、彼らが真に表現しようとするものの核心が見えてくるようでもあった。

 「みんな来てくれてありがとう。今日は懐かしい曲もやるから」。ぶっきらぼうに観衆に語りかける浅井。そんな雰囲気も、浅井自身のキャラクターを、よく表しているようでもある。その言葉に続いたのは、BLANKEY JET CITYの「パイナップルサンド」。その選曲に狂喜し、サビを合わせる観衆も現れる。ファンにとってはまさに“懐かしい曲”。しかし“古い曲”ではない。一曲目から続いているプレーに、この曲が水をさすようなことはない。そんな部分にも、浅井の作り上げてきたものには、何か一貫したものがあるようにも感じられる。

「不快感」を吹き飛ばす「快感」のサウンド

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

 疾走するビートで押しまくった序盤から、「New Pirates」あたりから少し捻りを加えた雰囲気に変わっていく。さらに続いて「じゃあここで、3人でジャムるからさ、何かテーマをくれない?」と浅井が観衆にリクエスト。その言葉にフロアからは、多くの言葉が飛び交うが、それをさえぎるように浅井が叫ぶ「それじゃ、“ツアー・ファイナル”ね。OK!」。

 インドの民族楽器・シタールのプレーを思わせる浅井のギターに、徐々に中尾が合わせる。続いて小林が入ると、一つのインストナンバーのイメージが、その姿を現していく。観衆がフリジアン(スケール)風のその雰囲気に浸っていると、あるタイミングでフッとブレイクし、次の瞬間猛烈なビートの連打が。多くの観衆は寝耳に水、打ち抜かれたような気分になったに違いない。

 そのプレーに続いて披露されたBLANKEY JET CITYの曲「ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車」が、楽曲の妖しい雰囲気そのままに観衆の気持ちをなおも魅了し、その裏でステージに向けての注意を縛り付けていく。

 そしてステージ終盤、「FIXER」からは、再びロック魂が牙をむく。『Sugar』のサウンドに狂喜する観衆は、止まることを知らないリズムのグルーブに大興奮、フロアのどこかからかは「最高!」という声も上がる。「さあ、ここからは飛んでいこうぜ!」浅井の声に続いたのは、またもやBLANKEY JET CITYの曲である「SKUNK」。フロア最前列の熱気による不快指数は相当なものに見えたが、同時に彼らの音から受けた、それを吹き飛ばすような「快感」も、ステージの終焉まで彼らを包んでいたように見えた。

 2度にわたっておこなわれたアンコールでは、JUDEの「何も思わない」や、BLANKEY JET CITYの「DERRINGER」「SALINGER」と、スペシャルな選曲も。曲のイントロが始まるたびにワっと声を上げ、大興奮で熱気を立ちのぼらせる。そして最後は、浅井健一&TIKの「Finish Field」で、まさしくのフィニッシュ。観衆に礼の言葉を浴びせる浅井。そして深々と礼を見せ、彼らはステージを降り、熱気溢れるこの日のステージに幕を下ろした。