Maison book girl、時空の歪んだ幻想的な宴 東京キネマ倶楽部

ライブレポート, 音楽

 Maison book girlが去る5月4日、東京キネマ倶楽部で、『Solitude HOTEL 4.9F』と題したワンマン公演をおこなった。チケットはソールドアウト。この日には、新しい発表もあった。その模様を以下の通りにレポートする。【取材=長澤智典】

デジタル時計の針が、急速に逆回転し始めた

 フロアーに足を踏み入れ、ふっとまわりを見まわしたときに目についたのが、客席後方に設置したデジタル時計。その時計は、始まりへ向け一秒ごとに時を刻んでいた。ただし、日付が「2018:06:23」と打たれている。今日は「2018:05:04」のはず…。

Maison book girl

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 その時計が指し示していたのは、ツアーのファイナル公演として日本青年館ホールを舞台に『tour final Solitude HOTEL 5F』」をおこなう日。その意味の解釈は…あえて、ここでは読んだ方々へ委ねようか。

 開演時間が5分前に近づいた頃、デジタル時計の針が、急速に逆回転し始めた。ふたたび時が進み出したのは、「2017:12:28」。その日は、Maison book girlがZepp Diver City (TOKYO)を舞台に4thワンマン・ライブ『Solitude HOTEL 4F』をおこなった日。ライブは、「2017:12:28:19:00」の時を告げると同時に、あの日の物語を繋げるように幕開けた。

 僕らが足を踏み入れたのは、東京キネマ倶楽部という古のグランドキャバレーのような会場。でも、Maison book girlのライブの始まりと同時に…いや、あのデジタル時計が時を告げだしたときから、その空間は時空が歪みだしていた。楽曲とメンバーのステージングを合図に、その歪みが作り上げたいくつものエアポケットは、現世とは異なるさまざまな異空間へ僕らを連れ出した。

 冒頭を飾った「sin morning」から僕らは、アンビエンスでエクスペリメンタルでポップな幻想エレクトロワールドへ感覚がグイッと引き込まれていた。舞台上で戯れるように歌い踊る4人の姿は、まるで妖精のようにも見えていた。手を伸ばせば触れられそうな。でも、そこにはけっして無くならない透明な境界線がくっきりと描き出されていた。そんな隔たりがあるのさえ知らず、無邪気に揺れ動き、歌う4人の姿に、僕らは憧れの眼差しを向けていた。

 すぐ側で歌い踊る4人は、底の抜けたデジタルなオルゴールからあふれ出る音に導かれ、はしゃぎだす。モノクロな世界へ同化するように音楽や歌声、パフォーマンスを重ねあった「rooms」。モノクロな世界へ色を差すように流れた「lostAGE」を通し、4人は次第に動きを大きく描きだした。躍動する? むしろ、モノクロな世界へ差し込んだグレイな色に惑わされ、迷うように心騒いでいた姿にさえ見えていた。

僕らがいる空間は、巨大な箱庭?

 ゆったりと、メロウな声色を染み渡らせた「end of summer dream」。アンニュイでポップな表情から、一変。「veranda」では、カラフルな音が飛び交う中、彼女たちは心開放するように音の庭の中で搖らいでいた。僕らが観ているのは、いや、僕らがいる空間は、巨大な箱庭? しかも、その空間には、互いの大地を大きく隔たらせるように大きな川が流れていた。十分黙視出来る距離にいながら。4人の息吹を感じれるにも関わらず、僕らは身体から熱を発することでしか彼女たちに存在を伝えられない。そんな満員の人たちの気持ちを知ってから知らずか…いや、4人はそれを感じていながらも、自分たちの想像が創りあげた庭の上で自由気ままに戯れ続けていく。

Maison book girl

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 「bed」の合図と共に、その空間は心を幻惑させる大きな遊園地へ様変わっていく。声を上げる、刺激的なアトラクション(楽曲)へ飛び乗った観客たち。その声を糧に、4人は喜びを謳歌するように歌い踊りながら、華やかな喧騒の中へ酔いしれていた。次第に熱を帯びる空間。その刺激が、たまらなく心地良い。その熱を、「cloudy irony」がどんどんクレッシェンドさせていく。なんて華やかな宴だろう。モノクロをベースにしたその空間には、何時しかいくつものカラフルな色が射し込んでいた。騒ぎたい衝動に、気持ちがあふれていた。

 そこは、夜が支配する空間。その空間に誕生したのは、まるで見世物小屋のような舞台。「faithlessness」に合わせ、切ない感情を抱きながら歌い踊る4人の姿は、まるで、好奇心の目に晒されながらも恍惚を覚えゆく見世物小屋の人形たちのよう。そんな感覚さえ、楽しく歌い踊る様を見ながら感じていた。そして4人は、次々と舞台から姿を消していった…。

 デジタル時計の針が、急速に時間を進め始めた。時が告げたのは、「2018:05:04:19:36」。まさに、今現在の時刻だ。しかも時空を歪ませる時計は、「film noir」が始まると同時に消滅。時を止めた世界の中、観客たちはテンションの高い楽曲に触発され、熱い手拍子をぶつけていく。刺激的な曲に魅了され騒ぐ、満員の観客たち。その様を見ながら、フロアーで沸く人たちを力強く歌いながらも煽るメンバーたち。熱狂が加速していく。見えない境界線が次第に壊れていく。

 続く「screen」がバーストすると同時に、メンバーらは時間と空間を捩じらせては、その隙間をピョンピョン飛び交いながら自由に行き交う時間ウサギとなり、思いきりはしゃぎ出した。その様に触発され沸き立つ満員の観客たち。カラフルな音が支配する空間の中、このまま一緒にヒステリックなまでに騒ぎたい。

 そんな狂騒劇から、一変。ノスタルジックに流れるワルツナンバー「最後のような彼女の曲」に乗せ、軽くスキップを踏みながら、4人はアンニュイに、メロウに歌声を響かせてゆく。その様は、まるで演劇の舞台を覗き見しているようだ。

 気持ちを幻惑するヴォイオリンの調べとヒステリカルでポップな表情、ノスタルジックな香りが化学反応を起こしたとたん、そこを支配したのはサーカス小屋のような舞台? まるでお遊戯会でも行うように「townscape」に乗せ戯れる姿へ、意識が強く惹きつけられる。続く「言選り」では、スラップの効いたビートとレーザーの音がシンクロしたステージングも投影。少女たちの織りなす浮世な宴が心地良い。

本能へ導かれるがまま無邪気に歌い踊る少女たちのよう

 ゆっくりど広がる、幻想的でアンビエンスな音の波。白い世界へ青い色を差すように広がり出したのが「blue light」。いつしかその音の波は美しく壊れだした。優しく砕けように舞い散る楽曲の上で戯れる彼女たち。その様に魅了される? その心地良さに魅せられたまま、続く「十六歳」でも、観客たちはMaison book girlの仕掛けるファニーなトラップに嬉しく溺れていた。

Maison book girl

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 ここからは、一気に喧騒の宴の始まりだ。「karma」が流れだすと同時に、全身に落雷した電気が貫いたような衝撃を体感。駆けだす演奏の上で、メンバーも、観客たちも、声を張り上げ騒ぎだした。この破天荒な様が、たまちなく刺激的で心地好い。もっともっとアガりたい、もっともっとイキきりたい…。

 舞台は、映像を通し暗転。4人は、白装束姿でふたたび舞台へ姿を現した。本編最後に披露したのが、新曲の「レインコートと首の無い鳥」。ねじの壊れた様で、歪むように歌い踊る4人。その姿は、隔離されたところで、本能へ導かれるがまま無邪気に歌い踊る少女たちのようにさえ見えていた。

 もしかしたらこのライブ空間自体が、隔離された空間の中へ棲む4人の少女たちの頭の中に形作られた、自由と無邪気さを求めた想像の箱庭の世界なのかも知れない。そんな4人の姿を、僕らは見えない境界線の向こう側から、熱狂した声と身体中から発した熱をぶつけては、手の届かない空間の中で戯れる4人に強い憧れの視線を向けていた。舞台から去る4人。そして…巨大なスクリーンに映し出された「劇終」の文字。

 アンコールの舞台上には、熱を抱きながらも親しみやすい姿になった4人がいた。彼女たちはハイテンションな気持ちを「snow irony」を通してぶつけてきた。熱いエールを交わす、その空気がたまらなく気持ちいい。この感情的な表情も、Maison book girlの魅力となる面と実感。

 最後の曲へ入る前に、6月20日に、ポニーキャノニオンより「レインコートと首の無い鳥」「おかえりさよなら」を収録したシングル「elude」を発売することを発表。さらに、6月23日の日本青年館ホールでのコンサートもソールドアウトさせたいと熱く意気込みも語っていた。

 最後にMaison book girlは、新曲の「おかえりさよなら」を披露。メンバー一人ひとりが歌をリレーしながら、サビでは4人で歌声と想いを重ねあわせ、心を開放するように歌い上げ、今宵の戯れの空間を閉じていった。

 これからMaison book girlは、イギリスを含む全国ツアーをスタートさせる。この勢いを世界中に広めながら、彼女たちがどんな風に成長した姿を見せてゆくのかも楽しみにしていたい。